以前、「フット・イン・ザ・ドア」という、有名な心理テクニックをご紹介しました。
※「フット・イン・ザ・ドア」については、こちらから過去の記事をご覧ください。
この記事が、とても好評だったので、今回は、「フット・イン・ザ・ドア」と対極をなす、
世界的に有名な心理テクニックについてお伝えいたします。
その心理テクニックとは、「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれるテクニックです。
Q. ドア・イン・ザ・フェイスとは?
それは、相手が拒否する大きな要求から始めて、
次に、それより小さな要求(もともと予定していた要求)に引き下げ、
最終的に、自分の要求を相手へ承諾させるテクニックのこと。
ドア・イン・ザ・フェイスがどのようなものか、わかりやすく、例にしてお話しましょう。
【ドア・イン・ザ・フェイスの例】 友人から5,000円を借りる場合
■A君
「すまないけど、7万円貸してくれないか?」
「今月は支払いが多くて、家賃が払えそうにないんだ。」
■B君
「貸してあげたいけど、今、手持ちが無いんだ。」
■A君
「3万円だけでもいいから、何とかならないかな?」
■B君
「う~ん。ちょっと厳しいなぁ。」
■A君
「おねがい!5千円だけでも助かるんだ!」
■B君
「まぁ、5千円ならいいけど、ちゃんと返してよ。」(財布を開く)
「ドア・イン・ザ・フェイス」がどのようなものか、ご理解いただけましたか?
これは、あくまで1つの例であり、
必ずしも、このやり方で、人からお金が借りられるわけではありません。
しかし、最初に「5,000円貸して!」と言うよりも、
成功する確率が格段に高まることは、何となくイメージできたでしょう。
あなたも、人に何かをお願いする時、知らず知らずのうちに、
このパターンに近い交渉をした経験があるかもしれませんが、
なぜ、このような交渉のやり方は、成功させやすいのでしょうか?
それは、「返報性の原理」が働くからです。
Q. 返報性の原理とは?
「人に何かを与えてもらったら、それに報いなければならない」
このようなルールは私たちの社会に深く根付いています。
たとえば、友人から誕生日プレゼントをもらったら、
その友人の誕生日はしっかりと覚えておき、こちらからもプレゼントをする。
フェイスブックへ投稿した記事に、いつも「イイね」をしてくれる友人には、
こちらからも、その友人の記事に、なるべく「イイね」をしてあげる。
今まで大切に育ててくれた親に対して、何かの恩返しをしたくなる。
実に様々な例がありますが、この社会的ルールのことを、
社会心理学では「返報性の原理」と呼びます。
稀に、与えてもらうことが当然で、お返しの必要なんてないと考える人もいます。
しかし、ほとんどの人間が、この「返報性の原理」が、
社会生活において、どれだけ重要かを本能的に理解しています。
誰もが「恩知らず」とは思われたくないし、そうなりたくありません。
この習性を応用したのが、ドア・イン・ザ・フェイスです。
ちなみに、ドア・イン・ザ・フェイスでは、最初に相手へ何かを与え、
返報性の原理を期待するテクニックではありません。
「譲歩」をネタに、返報性の原理を期待するテクニックです。
そのため、ドア・イン・ザ・フェイスは「拒否したら譲歩法」と呼ばれることもあります。
Q. 「拒否したら譲歩法」とは?
返報性の原理は、譲歩にも働きます。
具体的に言うと、最初に、相手へ何かの恩恵を与えて、その見返りを期待するのではなく、
こちらから譲歩をすることで、そのお返しとして、相手の譲歩を引き出すということ。
つまり、あなたの譲歩に対して、相手が返報しなければならない
シチュエーションを意図的に作れるということです。
具体的な方法は、以下の3ステップ。
1. まず、相手が拒絶する要求をわざと出す
2. その要求を、相手に断らせる
3. その後、譲歩という形で、あなたが予め目標としていた要求に引き下げる
このようなステップを踏めば、あなたの譲歩に対して返報性の原理が働き、
相手があなたの要求にイエスという確率が高まるのです。
子供のお小遣いのおねだりから、外交に至るまで、
「拒否したら譲歩法」は、知らず知らずのうちに、使われているケースが多いものです。
Q. では、ドア・イン・ザ・フェイス、どうやってコピーに応用するのか?
フット・イン・ザ・ドアは、コピーに応用できますが、
残念ながら、ドア・イン・ザ・フェイスは、コピーに応用できません。
ちなみに、最初に大きな金額を伝え、後のコピーで割引価格を案内するような料金説明のテクニックが、ドア・イン・ザ・フェイスと思われがちですが、そうではありません。
これは、お得感を演出するテクニックです。
ドア・イン・ザ・フェイスは、お得感を演出するテクニックではなく、
あなたの譲歩により、相手からの譲歩を引き出すテクニックです。
つまり、「ええ!これがこんなに安いの!」と思わせるのではなく、譲歩を繰り返した上で、「あなたがそこまで引き下がるなら、私も考えましょう」と思わせるテクニックです。
なので、ドア・イン・ザ・フェイスを使用するには、相手との対話が必要になり、
文章だけのコピーライティングでは、実践できない技術なのです。
しかし、この先、あなたのビジネスをより良くする上で、
ドア・イン・ザ・フェイスを知っておいて損はありません。
悪用するのは良いことではありませんが、
ぜひ、様々な交渉の場で、正しく使っていただければ幸いです。
それでは、今回の話をまとめましょう。
A. 「ドア・イン・ザ・フェイス」レスポンスを高める心理テクニックとは?
1. ドア・イン・ザ・フェイスとは、こちらからの譲歩によって、相手の譲歩を引き出し、意図的にあなたが目標とする要求を、相手へ承諾させる方法。
2. ドア・イン・ザ・フェイスは、フット・イン・ザ・ドアとは違い、コピーライティングに使えない。
※「フット・イン・ザ・ドア」については、こちらから過去の記事をご覧ください。
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