おもしろい広告アイデア(見てもらう、覚えてもらう、動いてもらう)

「広告なんて、見る気もしねぇ」

これが世の中の素直な意見です。

10年以上、コピーライターをしてきましたが、そんな僕でさえ、ほとんどの広告をスルーしますからね。でも、ときどき、「うわ~っ」とおどろき、じっくり見てしまう広告と出会います。

今回は、僕が、どうしても無視できなかった、おもしろい広告をご紹介します。

広告作りのヒントになれば嬉しいです。

記憶に残る「龍馬看板」


よく「創業100年」とか、「Since 1912」とか「愛され続けて50年」とか歴史を伝えるコトバを目にしますよね。長く営業していることを伝え、サービスの信頼性を訴えているわけですが、ちょっと前に、大阪の地下街で、この看板に足を止められました。


1844年創業ということですが、それをストレートに伝えるのではなく、日本人なら誰もが知っている偉人の年齢と重ねて伝えています。

すごく上手だなと感心しました。なぜなら、思わず足を止めてしまうだけではなく、歴史の長さをより具体的に感じることができ、記憶に残り続けたから。

ぶっちゃけ、1844年創業と言われても、その時代の景色は頭に浮かびません。でも、坂本龍馬がでてくるとどうでしょう?坂本龍馬の顔はすぐにでてきますし、何となく、その時代の景色も浮かびます。また、坂本龍馬が、そのお店に訪れたような雰囲気を感じるのは、僕だけではないでしょう。

創業の歴史も、このようなストーリー性のある切り口で伝えると、価値が高まるだけではなく、人を注目させ、覚えてもらいやすくなります。

ストーリーは人の記憶に残り、サービスの価値を高める…。この鉄則は、コピーライティングの常識。とてもよい勉強になりました。

「その時代は小学校なんてない!寺子屋だろ!」とおもう人もいるかもしれませんが、あえて現代のコトバを使うことで、お店の歴史をわかりやすく伝えているのでしょう。

見てしまう「目ヂカラ看板」


2013年ぐらいでしょうか?兵庫県の神戸市である実験が行われました。

それは、放置自転車の数を減らすうえで、どのような看板がもっとも効果的なのか?という実験。

で、もっとも効果が高かったのは、どの看板なのか?答えは、この「目ヂカラ看板」です。


僕の会社は神戸にありますから、実際に、この看板を何度か見たことがあります。

実験では、放置自転車やバイクの数が、1日30~40台だったのに、1日3~15台にまで減少したそうです。

兵庫県警科学捜査研究所が協力した、心理学を駆使した看板だそうで、「誰かに見られている」という意識に働きかける効果があるとのこと。

ただ、「子どもが泣く」などの、クレームも多かったようですが(笑)

実は、このテクニック、広告では昔から使われている手法です。人の写真を掲載するとき、目線を正面にすることが多いですよね。これは、「見られると、注目してしまう」という心理効果にもとづいているのです。

捨てられない「5円玉チラシ」


かなり前ですが、僕は、大阪で一人暮らしをしていました。

華の独身貴族@都会です。

大阪の中心地ということもあり、ポストには、毎日大量のチラシがポスティングされていました。もちろん、そんなチラシは、即ゴミ箱行き。

でも、このチラシだけは、どうしても捨てることができなかった…。


チラシの右上に注意してください。「5円玉」がありますよね?


5円とはいえ、お金を捨てるのは罪の意識が強く働いてしまいます。けっきょく、わたしはこのチラシを自宅に持ち帰り、読みはじめます。

ちょうど晩ゴハンどきだったので、カレーうどんをオーダーしました。めちゃくちゃ美味しいので、何度もリピートしましたね。特に、カレー丼が最強でしたよ。(また、食べたいなぁ)

余談はさておき、このチラシのように、DMやチラシに何かの物品を付ける技術を「グラバー」と言います。お金はかかってしまいますが、一瞬で読まれる確率がアップする裏ワザです。ときどき、「封筒の中に何か入ってるなぁ」と感じさせるDMを見かけますよね?アレのことです。

もちろん、グラバーは、現金ではなくてもOK。

たとえば、成功哲学の権威でありながら、コピーライターとしても名高い「ロバート・コリアー」(1885-1950)は、旅行カバンをダイレクトメールで販売するとき、グラバーを使うことで成約率を15%~30%アップさせました。グラバーは、カバンの材料となる牛革の見本です。

このように、グラバーは、ターゲットが「ええ!何これ!」とおどろき、一瞬で注目してしまうものであれば、何でも良いのです。

アクセサリーショップなら、原価0円に等しいキラキラ光るキレイな石をグラバーにすれば良いでしょう。フラワーショップなら、旬の花の香りがするグッズや、何かの植物の種を透明の小さな袋に詰めて、グラバーにすれば良いでしょう。

ちなみに、日本では、郵便法で現金を普通郵便で送ることは禁止されていますが、少量の広告の場合、弁護士によっては、OKと判断するケースもあるようです。グラバーを現金にする場合は、法律事務所にご相談下さい。

やってはいけないガチャガチャ


僕の息子は、ガチャガチャが大好き。

ホームセンターやスーパーでガチャガチャを見ると、いつも、僕におねだりをしてきます。だから、僕はいつも、ガチャガチャを見かけた瞬間、その場を離れようとするのですが…、ある日のことです。僕は、自らの意志でガチャガチャをすることになりました。

そのガチャガチャがコレ。


「本当に買ってはいけない」
「WARNING」
「ご購入は自己責任でお願いします」
「対象年齢15歳以上」
「今まで以上の期待はずれがでます。当社比2倍」
「Twitterのネタにしないでください」
「ブログやYoutubeのネタにもしないでください」

という、ハードコピーで埋め尽くされた表面。何が入っているのか、ほんとうにわかりません。

しかし、気が付くと、僕は財布から100円玉を取りだし、ちょっと興奮気味でハンドルをガチャガチャと回しはじめました。

そして、でてきたのがコレ。


「鶏ピーナッツ」というそうですが、けっこう気に入ってます(笑)。

で、このガチャガチャですが、「カリギュラ効果」という心理テクニックが使われています。「人は、禁止されたものに強い興味を抱く」という心理効果ですが、いろんな広告で使えますよ。

「でも、ブログのネタにしたらダメって書いてあるよね。大丈夫なの?」と思われたかもしれませんが、ご安心ください。SNSのネタにしてほしいから、禁止命令をだしているってこと(笑)

ユーザーに求める行動をあえて禁止することで、実際に行動してもらう、ちょっとズルいテクニックですね。でも、おもしろい。

キラーマシーンクッキー


さいごは、弊社の事例でしめくくりましょう。

弊社は、コピーライティングだけじゃなくて、フェイスブック広告や、リスティング広告の運用代行もしています。

会社員時代を含めると、グーグル広告は日本に上陸した頃から使っていますし、フェイスブック広告も、スタート段階からガッツリ使ってきました。

で、ぶっちゃけ言うと、こういった広告の効果って、年々落ちているんですよ。数年前、なんとかしなきゃいけないなぁ、とおもって、フェイスブック広告のバナー画像をいろいろテストしました。

フェイスブック広告の費用対効果を良くするには、クリックやリアクションなど、ユーザーからのポジティブな反応を増やす必要がありますからね。そのうえで、バナー画像はとても重要なのです。

テストの結果、もっとも費用対効果に貢献したのが、このバナー。


そう!ドラクエ世代ならば知らない人はいない「キラーマシーン」のクッキー。

ちなみに、広告で販売したのは、キラーマシーンやクッキーとは、まったく関係のないビジネス講座です。それなのに、目玉が飛び出そうなほどレスポンスがアップしました。

なんで、こんなことになったのか?答えは、たった1つ。ユーザーを一瞬で注目させることに成功したから。

フェイスブックのように、広告が山盛りの媒体では、とにかく、読み手は広告を見ようとおもいません。だからこそ、目立つことが大切です。目立つといっても、広告として目立つのではありません。

広告臭さ全開で目立とうとおもえばおもうほど、ユーザーは「うぜぇ」と思う時代ですからね。「おもしろそうなコンテンツ」「おもしろうそうな投稿」として目立つことがキーポイント。

ちなみに、このクッキーは妻が焼きました。すごいでしょ?

まさか、広告に使われるなんて、本人はおもってもいなかったでしょう…

さいごに


最後に、ひとつだけお話をさせてください。

僕は、セールスコピーライターとして、これまで1,000件以上の仕事に携わってきましたが、この数年で、ヒシヒシと感じていることがあります。

それは、ユーザーの広告離れです。広告に携わる方ならば、もう、お気づきだとおもいますが、ユーザーは、どんどん賢くなっています。ユーザーは、ますます、広告に興味を持たなくなっているのです。

この傾向は、今後もますます強くなるでしょう。だからこそ、ただ売るだけではなく、「おもしろい広告」で注目させるスキルは、多くの会社で必要になると考えます。

でも、これって素晴らしいことだとおもいませんか?売るのって、ハッキリ言ってしんどいことが多いです。でも、面白いことを考えることは、その行為自体がおもしろいですから。

おもしろさで注目を集め、しっかりと売る ⇒ 「おもしろく売る」

弊社の今後のテーマになりそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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大橋一慶

「売れるコトバ作りの専門家」。2002年からネット広告のベンチャー企業に入社して以来、大手ADSLプロバイダーの見込み客リストを10万件以上獲得するなど、多くのWEBプロモーションを成功させる。独立後はセールスコピーライターとして、1,000件以上の広告に携わり、年間10億円の売上に貢献するなど、ネット・紙媒体を問わず多くの案件を成功させる。なかでも「売りにくい商品を売ること」が得意で、学習塾、リフォーム、不動産、保険など、差別化が難しく、広告の反応が冷え切っている業界でも驚異的なレスポンスを叩きだす。株式会社みんなのコピー代表取締役。